長野県行政書士会

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東京会、埼玉会の認証ADRセンター調査報告

東京会、埼玉会の認証ADRセンター調査報告

2019年11月25日
令和元年11月12日、13日の2日間にわたり東京会、埼玉会のADRセンター運営について和田英幸センター長、二瓶裕史運営委員とともにADRセンターの申立て件数アップを目的に広報活動の実態について調査、情報交換を行いました。

 

11月12日:行政書士ADRセンター埼玉(以下、「ADR埼玉」)を訪問

 埼玉会の関口隆夫会長、前田新太郎センター長、内谷克章センター次長の3先生に対応していただきました。ADR埼玉は個人弁護士と提携して、日行連と日弁連の協定外の分野を扱い、敷金以外の3分野は行政書士と弁護士による共同調停を実施。調停は自主交渉援助型にこだわらず内容によって評価型でも対応しています。県弁護士会との関係も良好とのこと。ただし、弁護士が調停期日に出席するのでADR埼玉の弁護士費用負担は長野会よりも高額になります。

今年度、問合せは離婚・遺産分割分野が増加し(離婚5件、遺産分割5件)、遺産分割のうち2件が調停に進み、調停成立1件、継続中1件。ほかの問合せは自転車3件、敷金3件、その他が23件。自転車事故は交通安全協会からの紹介もありますが、全分野を通じてホームページを見たという電話が一番多いそうです。

広報は、新聞広告はほとんど効果がないのでホームページとポスター・チラシに重点をおき、こまめに行政や消費生活センターなどの挨拶回りを実施。県行政書士会のポスターに観光名所を取り入れたり、ADR埼玉のポスターに斬新なデザインを採用したりと、チラシも含めて人目をひき、何の相談窓口か一目でわかる工夫が感じられました。

また、法務省に届出をして、隣接する都県でADR調停ができるよう活動の広域化も進めています。ADR埼玉の今後の課題は「分野の拡大」と「申立て費用などの料金の値上げ」だそうです。

 

11月13日:行政書士ADRセンター東京(以下「ADR東京」)を訪問

光永謙太郎センター長、渡邉健次センター次長、山本惠美子運営委員の3先生に対応していただき、調停室や控室、センター事務室も拝見しました。問合せはペットトラブルが最多で、外国人関係は0件。外国人の問合せがない理由として、①ビザの関係で問題が表面化しにくい、②コミュニティがあって相談先がある、③行政の相談窓口や通訳などの相談環境が整ってきたこと等を挙げられました。ADR埼玉と同様に、問合せは今でもADR分野と関係のない電話が圧倒的に多いそうです。

 広報活動を兼ねて、春と秋の交通安全週間と秋の動物愛護週間に、都庁の相談窓口に相談員を派遣。おかげで東京都庁内の獣医課や区の窓口、保健所、警察署からの紹介ルートが確立したとのこと。また、初めて渋谷駅の構内広場でペットに特化した無料相談会(秋に1ヶ月余、開催)を開いたところ、相談が12件。来たる3月には「ペットトラブルシンポジウム」(後援:法務省、東京都、目黒区)を開催の予定です。シンポジウム開催にこぎつけたのは、過去7回(年に1回)地域ネコに関する相談会を開いた実績があったから。やはり費用のかかる新聞広告はせず、話題を作り「無料で記事にしてもらう」作戦です。

総括すると「力を入れるべきは研修ではなく広報。案件が来れば自然と勉強気運も盛り上がります」。分野別チラシの製作例も参考になりました。ADR東京の目下の課題は弁護士会との協定関係だそうです。

山口会の杉山久美子会長(日政連副会長)からは、最近、ペットの案件で調停実施にこぎつけるかと思いきや、予想外の経過(当事者が火災に遭われた)で実施に至らなかったお話や、「待っていないでセンターから出て相手の内に入るとよい。たとえば市や国際交流協会に入って行って外国人に関する委嘱を受ける等」のご教示をいただきました。また、ADR技法を生かした法教育を小学校5、6年生の授業で実施したところ、たいへん好評で教員から「(こんなに良い内容なら)もっと低学年のうちにやってもらえば良かった」とコメントされた由。身近なテーマについて行政書士が間に入って進めるうちに、児童が自主的に話し始めるという展開で、「相手の話をよく聴きお互いの良さを探すADR手法の進め方」が学級の話し合いでも有効だと、児童にも先生方にも理解されたそうです。ちなみにこの授業が実現したきっかけは、杉山先生が賀詞交歓会で来賓の市長に打診して快諾されたことだということです。

まとめ

東京会、埼玉会のADRセンターも何年も件数が伸びず試行錯誤して、案件が来るようになったそうです。現在は、埼玉も東京も分野ごとに特化した広報(分野別のチラシ・ポスター製作、配布先は敷金なら大学やその周辺の大家、ペットは保健所や獣医師会、自転車なら警察署・交通安全協会や高校、外国人は国際協力協会など)を行ない、ホームページを充実させ、新聞広告よりも行政相談への協力やセンター独自の相談会とマスコミ対応を重視しています。とにかくADRセンターを知ってもらうために、あらゆるつてを利用して、できることをできる地域から始めることが必要だと痛感しました。同時に、調停合意の書類作成に関しては、さらに検討が必要だと思いました。

ADR研修(手続実施者養成および上級者研修)は、認証要件の関係で研修回数が多く、受講者もセンター委員も負担が大きいのですが、具体例をお聞きして研修だけでなく広報にも力を入れていこうと確認し、実りの多い調査となりました。今回、ご多忙にもかかわらず快くご協力いただいたADR埼玉とADR東京の先生方に心から感謝申し上げます。

13日に日行連虎ノ門事務所を表敬し常住豊日行連会長(東京会会長)と井口由美子日政連会長(熊本会会長)にご挨拶し、お会いした杉山久美子・日政連副会長(山口会会長)からADR事例について貴重なお話を伺うことができましたことを併せてお礼申し上げます。また、お会いしたすべての先生方から台風19号の被災についてお見舞いの言葉をいただいたことを申し添えます。

最後に、お知らせですが、令和2年1月31日(金)10時~16時のADR研修会は、講師にADR東京の光永謙太郎センター長をお招きして本会会館で行います。全会員が対象(受講無料)ですので、ご参加よろしくお願いします。           (ADR副センター長 深澤和歌子)

 

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