特定行政書士ブラッシュアップ研修会報告
講師は、同年3月まで総務省行政不服審査会委員を務められた東京都行政書士会の伊藤浩先生をお招きしました。講義は、①行政不服審査法改正・見直しの内容、②特定行政書士の意義、③行政不服審査法の思考法、④行政不服審査が適用されたケース分析、⑤特定行政書士の可能性について取り上げられました。
特定行政書士が不服審査申請手続きについて包括代理ができるようになったことは、これまでに広報等で周知されております。
しかし、案件によっては依頼者が求めたとしても、不服審査申請を行うことが適切でない場合があります。依頼者の「最適解」は何かを考え、不服審査を選択しないという提案型の仕事も大切であることが講義で紹介されました。
これらの業務の前提として、行政不服審査法を学ぶことは勿論のこと、適正な手続きを知るために行政手続法を学び、通達、要綱、審査基準(ガイドライン)、マニュアル、立法事実、審議会(議会)議事録、行政実務等から行政の論理を深く学ぶことが必要ということです。
さらにこの知識を活かして、行政庁に対し行政手続における牽制的ツールをもつことが、特定行政書士になる意義の一つとしてあげられました。つまり、不服審査の対象となる以前に、行政手続きが適正なものとして行われるよう、行政統制としての役割を担うことが求められているということでした。
今後の特定行政書士の活躍の場として想定されるのは、行政制度アドバイザー、審理員、審査員、支援要員候補者などをあげられました。市区町村では、そもそも不服審査件数が少なく、審査要員を育成することができない場合があるということです。令和4年8月19日時点で、特定行政書士は全国に4629名おり、長野会は4月1日時点で70名ですので、機会があれば審査要員に応募することを期待されておりました。
法務部員 木内拓郎